ここではないどこかへ行きたい・・・。
貴方がいない世界なんてつまらないし、何の意味もない・・・。
こんな世界、潰れてしまえ。
軍国家なんて・・・。
ハウィー・・・。
あなたは、
あなたは今どこ・・・?
***If it were not for You...***
「ふあぁ〜。やっとついたぜ。イーストシティ!」
今到着したばかりの汽車から小柄な少年が降てきた。
汽車の中でずっと同じ姿勢で窮屈だったのか、身体をほぐすように両手を空に向かって伸ばしている。
「じゃあ、まずは宿を探そうよ。もう暗くなってるし・・。」
少年の隣には鎧の姿をした弟が、ガシャガシャ音をたてながら兄が持っていかなかった鞄を持って追っかけて歩いてくる。
もう!兄さんちゃんと持ってよ!とアルフォンスが言うが、エドワードは素知らぬ顔で、
「今日はもう東方司令部には行けないな。明日にでも行こうか」
アルフォンスに笑顔でそう言うと、エドワードは宿を探しに行くために急に走り出したため、鎧を響かせ慌てて追いかけるアルフォンス。
「わぁ!まってよ兄さん!!」
「あああ〜。めんどくさい」
ところ変わってここは車の中。
ロイは今、部下のハボックと二人っきりで市内の巡回に来ていた。
「どうして私が男と車の中で二人っきりにならなければならないのだ・・」
顔を顰めながらぶつぶつ文句を言う東方司令部司令官ロイ・マスタング29歳焔の錬金術師。
そんな上官の態度をハボックは運転席から横目であきれ果てた目で見ながら、
「大佐が仕事サボっているから悪いんでしょうが・・。俺だって嫌ですよ」
ロイは今まで溜めに溜めていた書類を今しがた追えたとこで、ホークアイから罰として市内の巡回を言い渡されたのだ。
ロイ一人ではナンパをして、巡回にならないのでお付として嫌がるハボックを付けたのだ。
ホークアイの手腕にまったくどっちが上官なんだかわからないな・・。と、心の中で思うハボックだったが、どっちも上司には変わりないので逆らわないほうが懸命だと心に誓っている。
「あ、そうでした。エルリック兄弟がここにきてますよ」
車での巡回がそろそろ終わろうとして、司令部に戻ろうとしていたときにハボックは思い出したようにロイに言った。
もう日はすでに沈んでいる時刻だ。
「なに!?来ているのか?」
ロイはつまらなそうに窓の外をぼへ〜と眺めていた目を、驚いたようにハボックに目を向けた。
ハボックは驚いたように一瞬ロイの顔を見たが、すぐさま運転に集中しながら、
「ええ。さっき駅の警備員が言ってましたので、確かだと思います。アルがいるんだし、見間違いようがないと思いますので」
と、説明した。
ロイは考え込むように腕を組んでいたが、しばらくしてからハボックにエルリック兄弟の泊まっている宿屋に今から向かえ。と指示した。
「今からですか!?」
ハボックは驚いて口から煙草を落としてしまった。
落とした煙草が足元に落ちたので、慌てて足で火を消しているハボックを見ながら、
「そうだ。宿屋の場所はいつもと同じだろう?そこへ向かえ」
有無を言わさぬ言い方だ。
でも、顔はどこか意地の悪い笑みを浮かべているのは気のせいだろうか・・。と思うハボックだったが、深く関わらないほうがいいと判断して兄弟が泊まってる宿ってどこだっけ?と思い出しながら車を運転させた。
ロイとハボックは、エルリック兄弟がいつも泊まっている宿屋の前に車を止めた。
ハボックにはここで待っているように指示すると、ロイは一人で宿屋の中へ入っていき、宿屋の主人に兄弟の部屋の番号を聞いて部屋に向かった。
ハボックは一人車の中で、エド達に何の用だろうか?と首をひねりながら疑問に思った。
こんな夜遅くにわざわざ宿屋を訪ねなくても、イーストシティに居るんだから明日司令部に顔を出すだろうに。
エドワードに急用の仕事などあっただあろうか?
上官の考える事は時々わからなくなるな〜とあんまり気に留めず、タバコを蒸しながら上官の帰りを待った。
エルリック兄弟は、特に読む文献もなく部屋の中でごろごろしていた。
エドワードはシャワーを浴びベットの上で髪を梳き、黒のタンクトップと半ズボンの格好で窓から見える星空を眺めていて、アルフォンスは鎧の体にオイルを鼻歌を歌いながら塗っている。
「あああああー!!!」
エドワードはついに我慢できなくなったかのように叫び声を出し、そんな理解不能な兄をびっくりしたように見つめたアルフォンスは、
「なになに!?どうしたの?兄さん!?」
兄が突然意味不明の叫び声を上げるので、心配した声で兄に尋ねた。
鎧を拭いていたオイルを落としそうになった。
エドワードはベットの上で丸くなったり身体を伸ばしたりと、ばたばたしていた。
この光景だけ見ると気が狂ったかのように見受けられるだろう。
アルフォンスはしばらくその様子を見ていたが、エドワードは突然ピタリと動きをとめガバっと跳ね起き、アルフォンスに向かって、
「暇だ!限りなく暇だ!!」
と、深刻な顔をして叫んだ。
アルフォンスは呆れて溜息を付いてしまった。
こんなことで変な行動をしていたのかという目で兄を見つめた。
でも、今のエドワードにはその暇がほしかった。
ここの所アルフォンスには隠しているようだったが、根詰めていたようで睡眠時間が少なくなっているようだ。
それに気が付かないほどアルフォンスは鈍感ではないし、ずっと夜も眠らない状態なので周囲に対する気配や雰囲気などには長けていると自負するぐらい。
いくら元に戻るためだからといって、無理をしすぎて体を壊したら元も子もないのに。
だから、エドワードには少しでも休んでもらいたいのだが、この弟の気持ちはエドワードには通じていない。
いくら休んでくれといっても、本当に体が限界に来て倒れないと休まない。
「兄さん。少しは眠りなよ。身体に悪いよ?」
と。アルフォンスのお願い攻撃が効いたのか、はたまた本当に暇でやることがなかっただけなのか、ふてくされて不て寝なのか、どれにしてもエドワードは無言でもそもそとベットに横になった。
兄がやっと寝てくれたことに感謝をしながら、アルフォンスはまた鎧にオイル塗りを再開した。
エドワードが眠って1時間ぐらいしたと頃に、部屋のドアを叩く音が聞こえアルフォンスは疑問に思いながらも、ドアに向かった。
宿屋に泊まっていても誰も尋ねてくることなんかほとんどないのに、しかもこんな夜だ。誰だろうとちょっと怒りながら、ドアを開けた。
兄さんが寝てるんだから、静かにしてよね!という思いを込めながら、
「はい?」
といつもより低めの声で扉の前にいる人物に話掛けた。
だが、人物を見てアルフォンスはビックリした。
そこに居たのは大佐だったからだ。
こんなところに何故いるのかと戸惑っていると、アルフォンスの動揺を鎧の振動で察したのか、エドワードいわく胡散臭い笑みを浮かべながら、
「こんばんは。夜遅くに尋ねてしまってすまないね。鋼のは起きてるかい?」
全然すまなさそうじゃない口調でロイはエドワードを訪ねた。
アルフォンスは、こんな遅くに大佐がじきじきに訪ねてくるのだから、なにか急用の軍の仕事でも入ったのだろうか・・・。と深刻に考え始めた。
「兄さんはさっき寝たばかりなんです。起こしてきます」
大佐にはいつもお世話になっているから兄を起こさないと、と思い今しがた寝たばかりのエドのことを気遣いながらも、起こしにいった。
アルフォンスが部屋の中へ消えていくと、ロイも部屋の中へ入り込んだ。
まだ、9時なのに鋼のが寝るなんて珍しい・・・。いつもは夜遅く、明け方まで体調を気にせず文献を読みあさっているのだが、何かあったのだろうか?
少しばかり心配になってくる。
自分の体のことにはてんで無頓着だから、誰かが示してやらないとすぐに体を駄目にしてしまう。
その役目はアルフォンスだが、しっかりセーブできなかったのだろうか?
と思いながらアルフォンスの後を追いかけていくと、寝室に辿りついた。
エドワードは寝室のベッドの上にいて、窓からの月の光で美しい金髪の髪がさらに輝きシーツの上に広がっている姿は息を呑むほどの美しさだった。
「兄さん。兄さん。大佐が訪ねてきたよ」
アルフォンスの言葉に我に返ったロイは、一つ咳払いをしてエドワードの寝顔を覗きこんだ。
眉の中心に皺が寄っていて、なんだか苦しそうな顔をしている。
アルフォンスの呼びかけで、意識は浮上し始めているが眉間の皺が取れないでいる。
「鋼のはそんなに疲れているのか?」
ロイはエドワードの頭に手を置きながら、今だ起きない寝起きの悪い兄を起こそうと必死になっているアルフォンスに聞いてみた。
いったんエドワードを起こすのを諦めて、体をロイの方へ向けながら、
「そうなんです・・・。このところ凄く疲れているみたいで。休んでっていってもなかなか聞かないんです。今ようやっと寝たんですがね」
どうやら、ちょうどぐっすり眠れたところにロイは来てしまったみたいだ。
暗に大佐が来なければぐっするこのまま眠れるのにと言われているみたいで、苦笑いを浮かべてしまった。
さすがに悪いと思ったので、今日はいったん引き換えってまた後日司令部に来てもらおうと、エドワードに伝言を頼もうとしたが、
「・・・・。なんで大佐がいるんだよ」
不機嫌そうな声がした。
どうやらエドワードが起きたらしく、同時に視線を向けると手の下から睨むようにしてロイを見つめていた。
アルフォンスと話している声で起きたようだ。
エドワードは自分の頭の上にロイの手が乗っていることに気付くと、右手で乱暴に振り払った。
オート―メールの右手で払われたから、若干痛みを感じた。
「酷い言いぐさだな。鋼の」
いつものように意地悪く対応してみると、ますます不機嫌そうな顔になった。
アルフォンスはおろおろしていて兄を止めようかどうしようか迷っているようだが、止めないところを見るとやはり自分が訪れたのがまずかったということが窺える。
ロイはふぅと、息を吐いて、
「君達がイーストシティに来ていると聞いてね、生態練成に関する情報を教えようかとわざわざ来てやったのに、どうやら必要ないらしいな」
わざとらしく言うと、腰掛けていたベットから立ち出口の扉へと歩いていった。
それを見て慌てたのはエドで、ベットから飛び起きロイを裸足で追いかけた。
ロイの軍服の裾を掴み、強引に引きとめた。
「なにか情報があるのか!?」
エドワードは必死の形相でロイに食って掛かった。
「そのためにここまでやってきてあげたんだよ」
笑みを浮かべながら、軍服の裾を握っているエドワードの左手を払いながら振り向いた。
「だが、気が変わった。明日教えるとしよう」
ロイはにこやかな笑みを浮かべながら、小さな子供に言い聞かせるようにエドワードの顔を覗きこんだ。
エドワードは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに怒りの表情を表に出した。小さな子供に言い聞かせるように。
「はぁ!!?何言ってんだよ!!今教えてくれるために、ここまでやってきたんじゃないのかよ!?」
掴みかからんばかりの勢いのエドワードにロイは、
「だから、気が変わったと言っただろう。君はおとなしく寝なさい」
遅くにお邪魔して悪かったな。と、捨て台詞を残して去ろうとするロイに立ちはだかるエドワード。
「なんなんだよ!?どうして気が変わったんだよ!!」
エドワードとしては何が何だかさっぱりだ。
しぶしぶ寝て、起きたらいきなり上司のドアップがあり、しかもその上司は生態練成の情報がある。といったのに、教えないときている。
嫌がらせ!?嫌がらせなのか!!?
寝起きなのでなおさら頭が回らないでいると、
「君は疲れているんだろう?せっかく寝たのに邪魔をして悪かった。情報は明日だ」
急に真顔になり上司としての顔つきになったロイがエドワードには苦手だ。
いつもは、だらけていて不真面目な印象の強い大佐が、真面目の顔になると急に軍人だと改めて気付かされる。
軍人は嫌いだ。でもここの人達は好きだ。
矛盾しているが理屈じゃ割りきれない・・・。子供じゃなくてもそんなことを思ってしまうので、エドワードにとっても同じことだ。
急に大人しくなるエドワードを不思議に思いながら、それでは。と、アルフォンスに後を任せて出ていった。
エドワードは顔を上げて、立ち去るロイの背中を睨みつけていた。
「いきなり来て、いきなり起こして、どうゆうつもりだっつの!!」
ロイが立ち去った後、エドワードは地団太を踏みながら叫び出した。
そんな兄の行動を見ながら、アルフォンスは大佐にちょっぴり感謝をした。
疲れているエドワードは、今日寝ないと本当にダウンしてしまうだろう。
せっかく来てもらって悪かったけど、今兄に生態練成の情報を与えないで良かった・・・と心から思ったアルフォンスだった。
今情報を与えてしまうと、すぐにその情報を確かめようと情報に記された場所に行ってしまうか、文献ならば朝まで読みふけってしまうだろうから。
大佐も兄さんのことを少しは考えてるれているんだ、アルフォンスはちょっぴり感動した。
そんなアルフォンスをよそに、エドワードはまだ怒りくるっていた。
ただでさえイライラしていたのに、さらにわけがわからなくなったのだ。
大佐の考えていることなんて分からない!!
大人の気まぐれなのか!?
せっかく寝たのに、起こして、また寝ろだと!?
意味がわからん!!
大佐の気持ちはさっぱり理解していないエドワードであった。
「あれ?大佐。意外と早かったっスね」
車の外で煙草の煙を吐き出しながら、ハボックは宿屋から出てきたロイに向かって言った。
「ああ。鋼のは寝ていたみたいだ。そこを起こしてしまってね。悪いと思ったので、情報は明日にすることにしたんだ」
そっけなくいい放ち車の助手席に滑り込み、ハボックに早く発進させろ、と睨んだ。
わざわざ来てしかも起こしてしまったんだから、用件ぐらい伝えればいいのに・・・・と上官に振り回されるエドワードを哀れむ。
どことなくイライラしている上官を見ながら、見えないように溜め息を吐きながら、ハボックは慌てて煙草の火を靴の裏で消し、東方司令部に向けて車を発進させた。
「大将がこんな時間に寝るなんで珍しいっスね」
運転しながらハボックは笑った。
「なんでもまた無茶をしているそうだ」
「またっスか・・・」
ロイのこの一言で、すべて伝わったようだ。
エルリック兄弟はとくに兄の方は、目的のためなら日夜問わず走り回り、自分の体を酷使している。
疲れを知らない弟のアルフォンスならまだしも、健康な肉体のあるエドワードはいつも極限まで無理をしてしまう。
そのうち、どっかで倒れないだろか・・。それが今の軍部での心配事だった。
知らなかったとはいえ、やっと眠ったエドワードのもとを訪れてしまって、せっかくゆっくり寝ていたというのに起こしてきてしまった。
しかも、怒らせて・・・。
ロイは後悔をした。
今日の味気ない1日の終わりに、いつも騒がしいエドワードを訪ねたら、面白く会話ができるだろうと思っていた。
気まぐれで訪れて、あの子供の睡眠時間を減らしてしまった。
それに、憔悴しきっているあの子にアイツと会わせていいものか・・・。
今日会いに行ったのはまずったかもしないと項垂れた。
今あの子は怒っているだろな・・、と思いながら溜め息を吐きながら、窓の外の暗がりの風景を眺めていた。
**TO,BE・・・**
やっと長編小説始動しました☆
てか第一章はあんまり本編とは関係ありませんね。序章です。(なら書くなよ)
*2005.6.4